「なくなったら困る仕事」を守る。スケッターが解決する介護業界の人手不足

高齢化が進む今、介護現場では人手不足が深刻化しています。

そんな介護業界に挑むのが、謝礼付きボランティアと介護事業所をつなぐ「スケッター」です。

登録者の約8割は介護未経験者というこの異色のサービスについて、代表の鈴木亮平さんに伺います。

鈴木亮平(すずき・りょうへい)さん/株式会社プラスロボ 代表取締役CEO

1992年生まれ。宮城県仙台市出身。元仙台育英学園高校の硬式野球部。大学卒業後、アイティメディア株式会社に入社。3年間の記者生活を経て、学生時代から関心を持っていた介護分野で起業を決意し、2017年に株式会社プラスロボを創業。
資格や経験を問わず、誰もが自分のできること、空いている時間で介護業界を支えられる仕組みを模索する中で、スケッター事業の構想にたどり着く。「介護業界の関係人口を増やし、人手不足を解決する」をミッションに、2018年にスケッター事業を企画し、2019年にサービスをリリースした。

「なくなったら困る仕事」に一生をかけたかった

ーー 介護の領域で起業しようと思ったきっかけを教えてください。

 なくなったときに誰かが本当に困る仕事をしたかったんです。

きっかけは大学の授業でした。社会問題を扱う授業で、日本の高齢化がとても根深い問題だと知り、衝撃を受けたんです。

もうひとつ、便利なものがもっと便利になる仕事に、一生をかける価値を個人的に感じなかったんですね。介護や福祉の人手不足は、社会の維持に直結する話で、これなら取り組みたいと思えたんです。

ーー介護領域は課題が多いですが、取り組むスタートアップは少ない印象がありま す。

そうですね。マーケットの規模やビジネスとしてのやりやすさが、理由として大きいのだと思います。

ただ、時価総額が大きい企業ほど社会的な意義が大きいかというと、必ずしもそうではないと思うんです。

僕は人間が生きていく上で不可欠なものを提供することに意味があると思っています。これからは起業家、投資家、市場も、そういう社会的意義のある会社に価値を感じるよう変わっていくと思っています。

ーー そうした思いを胸に、「スケッター」を立ち上げられたんですね。

 

そうですね。スケッターは謝礼付きボランティアと介護事業所をつなぐサービスで、すでに多くの方に使っていただいています。

登録している謝礼付きボランティアの方のほとんどは介護未経験です。

年代は10代から80代までと幅広く、スキマバイトとは違い「地域に貢献したい」「役に立ちたい」という気持ちが強い人が集まっているのが特徴です。

どうやって地域課題や介護と関わればいいか分からなかった人たちが、スケッターを通して関われるようになっています。

介護資格がなくてもできる介護の仕事がある

ーー 介護が必要な人とボランティアではなく、介護事業者と繋いだのはなぜですか?

まず、個人と個人をつなぐC2Cは、トラブルが多くリスクも大きいんですね。いきなりそこで勝負するのは、難易度が高いと思いました。

また、地域の福祉の拠点が長期的に安定して運営できる仕組みを、先につくりたいと考えました。

実際、施設にはいろんな業務が混ざっています。そのうち外部の人に頼みやすい仕事を切り出すことで、これまで関わる機会がなかった地域の人が関われるようになりました。

ーー 介護資格がない方に任せられる仕事にはどんなものがあったのでしょうか。

介護事業所で資格が要らない仕事は、たくさんあります。

特に多いのは、レクリエーションですね。楽器演奏や趣味、特技を披露してもらうと、利用者さんが喜んでくれます。

その他に、簡単な片付け、資料づくり、SNS発信などを得意な人に任せることもあります。

人手不足な介護事業所では、職員がなんとか頑張ってやっているケースが多いです。こうした仕事の切り出しのサポートから行っています。

ーー 介護施設の人手不足を埋めるなら、スキマバイトのような仕組みもあると思いま す。スケッターは何が違うのでしょうか。

スキマバイトは、「誰でもいいから埋めてほしい」という発想です。

対して、スケッターは謝礼付きボランティアのため、誰にどんな課題を解決してもらいたいかを、事業所が選べます。

働く人と介護事業所の関係も違います。スケッターでは同じボランティアの方と何度も関わることが多く、人間関係ができていくんです。地域のボランティアが増えることで、外部の人にその事業所がどんな場所か知ってもらえて、ブランディングにもなります。

社会課題に挑むなら「うまくいかなくてもやめない」覚悟を

ーー スケッターを大きくするために工夫されていることはありますか。

現状だと、ボランティアを希望する方は非常に多い。逆に、介護事業所を集める方が難しい。

「足りない人手を埋める」という発想だと、スキマバイトが第一の候補になるってしまうんです。

けれど、地域で関わる人が増えなければ、穴埋めを続けても母数が足りずに、いずれ行き詰まります。

だから、「単なる労働のマッチングではない」と事業所に理解してもらうことが、いま一番の仕事だと考えています。

ーー 今後の目標を教えてください。

全国の自治体と連携して、最終的には社会のインフラにしたいと考えています。

いまは30以上の自治体と連携しています。熱量が高い自治体職員も多く、大きなやりがいにもなっているんです。

電気や水道のように、スケッターがひとつのインフラになる。それを、実現したいですね。

ーー 最後に地域の課題に挑もうとする起業家へ、メッセージをお願いしま す。

「撤退基準」を作らないことが大事だと思っています。

根深い課題であればあるほど、事業としてうまくいかせるのは大変です。でも、だからこそ挑む理由にもなると思うんです。

やり方を変えるのは構いません。ただ、解決したい課題は変えない。どんなにうまくいかなくても、やめない。

社会起業家を目指すなら、そうした覚悟が必要だと思います。


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